肥満症の治療
肥満症の治療
「肥満」とは太っている状態であり、病気を指すものではありません。肥満かどうかは体脂肪量で判断されますが、体脂肪量を簡単に測定する方法がないため、基準としてBMI(ボディマスインデックス)が国際的に一般的に利用されています。WHOの肥満の基準では、BMI30以上を肥満としていますが、日本ではBMI25以上を肥満としています。これは日本肥満学会が設定した基準で、日本人ではBMI25を超えると、耐糖能異常(血糖値の異常)、脂質異常症、高血圧症などの合併症の発生率が上昇することが根拠となっています。
一方、「肥満症」とは内臓脂肪の蓄積、あるいは肥満に起因・関連した健康障害を合併し、減量治療を必要とする“疾患”を指します。「肥満」自体は病気ではないものの、「肥満症」は1つの疾患であり、医学的な治療が求められる場合があります。
肥満症を治療するということは単に体重を減らすことではなく、体重を減らすことによりそれに合併する疾患を改善・経過させることにあります。
肥満症の治療には食事療法、運動療法、行動療法、お薬による治療法、外科療法がありますが、そのうち食事療法・運動療法・お薬による治療についてここで解説いたします。
上記症状がある方は、ぜひ一度検査を受けていただくことをお勧めいたします。
食事療法は肥満症治療において最も有効かつ基本的な治療です。
肥満症を改善するには、摂取エネルギーが消費エネルギーを超えないようにすることが重要です。食事療法では、医師や管理栄養士のアドバイスに従い、適切なエネルギー量の摂取によって体重を減らすことを目指します。食事療法の目的としては、単に体重を落とすだけでなく、栄養バランスが整った食事を継続し、長期的に適正体重を維持することが目標です。過度な食事制限は、短期的な体重減少があっても、健康を害したりリバウンドの原因となり得ますので注意しましょう。
食事メニュー以外にも、食事の摂り方が肥満に関わることがわかっており、以下のポイントに注意が必要です。
運動療法は減量だけでなく、減量後の体重維持にも有効です。
運動療法では有酸素運動と筋肉トレーニング(レジスタンス運動)が効果的です。有酸素運動は糖質や脂肪を消費し、持久力の向上やインスリン感受性の改善が期待できます。レジスタンス運動では筋肉量を増やし、基礎代謝を維持することが可能です。運動は週に3回以上行うのが理想的です。運動を取り入れるだけでなく、日常生活で活動的になる工夫も大切です。
食事療法と運動療法を併用して摂取エネルギー量よりも消費エネルギー量を増やすことにより、より効果的な体重減少が期待できます。
ウォーキングは特別な道具を必要とせず、誰でも気軽に始めることができるので非常にお勧めです。ウォーキングを行う際には、以下のことに気をつけましょう。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)はインクレチンと呼ばれるホルモンの1つです。他の代表的なインクレチンとしてGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)というホルモンもあります。
摂取した食事が胃から小腸に到達するとインクレチンが小腸から分泌され、すい臓を刺激することによりインスリンの分泌が促されます。この働きによってインクレチンは血糖値の上昇を抑制します。またインクレチンは胃の動きを抑える作用もあることから、食欲を減少させる効果もあります。
このお薬は主に糖尿病の治療に対して承認を得ていましたが、高度の肥満(BMIが35以上)、あるいはBMIが27以上かつ2型糖尿病や高血圧症、脂質異常症などを併発している肥満症の方にも保険適用薬として使用できます。
BMI35以上の高度肥満症の方に対してはマジンドール(サノレックス®)という中枢性食欲抑制薬が保険適用で使用できますが、服用期間が3か月までと制限されています(当院では処方を行っておりませんのでご了承ください)。
肥満症の治療方針について、まず何よりも大切なのは生活習慣の見直しです。食事内容や運動習慣、睡眠時間など、生活習慣の改善は、肥満症の治療において必須の取り組みです。
また、ただ単に食事制限をするだけでは長続きせず、リバウンドの原因にもなってしまいます。そのため、治療を進める上で、患者さんがストレスを感じない程度に、またいかに楽しみを残しながら治療を進められるかを考慮することが大切と考えています。
当院では、患者さん一人ひとりに合わせた治療方針を提案し、その方の生活習慣や体調に合わせた食事療法や運動療法などをご提案しています。
また当院には管理栄養士がおり、栄養相談により食事療法の正しい知識を身につけていただくお手伝いをいたします。
無理なく継続できる食事療法を行うために、いちど栄養相談を受けてみませんか?